犬の外耳炎の診断・治療って?診断・治療・予防法まとめ【獣医皮膚科専門医が解説】

皮膚病解説

犬の外耳炎の要因には、外耳炎を生じる原因となる主因、外耳炎に続いて生じる副因、外耳炎を悪化させる増悪因、外耳炎の発症リスクを高める素因があります。外耳炎を治療する際にはそれぞれのケースで主因、副因、増悪因、素因をどのように止めるかが大切です。とくに主因と素因は外耳炎が完全に治るのか、それとも長期的にケアを続けていかなければならないのかを決定するために重要な因子になります。外耳炎の治療は点耳薬と洗浄だけでなく、総合的な対応が必要となります。

今回は犬の外耳炎の診断と治療について詳しくご説明します。

※ 外耳炎の原因・症状についてはこちらも

犬の外耳炎って?原因・症状・治療・予防法まとめ【獣医皮膚科専門医が解説】

 

■ 外耳炎の診断

① 耳の観察

外耳炎の症状は左右対称かどうかを確認し、その後、耳鏡や耳道内視鏡(ビデオオトスコープ)を用いて下記を確認します。

  • 炎症の程度や範囲
  • 耳垢の程度
  • 分泌腺の状態
  • 異物の存在
  • ポリープなどの存在
  • 耳毛の量と位置、耳道の細さ
  • 鼓膜の状態

 

② 耳垢の観察

耳垢があった場合は、採取して下記を確認します。

  • ミミダニ
  • 炎症細胞
  • ブドウ球菌や緑膿菌
  • マラセチア

 

③ 皮膚の症状の確認

皮膚の症状(発疹やかゆみ)を確認します。

  • アトピー性皮膚炎と食物アレルギー(赤み、かゆみなど)
  • 脂漏症(赤み、ベタベタ、フケ、かゆみなど)
  • 内分泌失調(脱毛、色が黒くなる)

これらの皮膚トラブルについて詳しくはこちら

犬のアレルギーって?原因・症状・診断まとめ【獣医皮膚科専門医が解説】

 

④ 一般状態の確認

食物アレルギーでは嘔吐や軟便などが認められることがあります。内分泌失調では活動性、食欲、飲水量、排便排尿などに変化が見られることがあります。

 

■ 外耳炎の治療

① 主因に対するアプローチ

診断の①~④で主因であるミミダニ、脂漏症、分泌腺の異常、異物が診断できます。ミミダニが検出された場合には薬による駆虫、分泌腺の異常には内科的あるいは外科的な治療、異物が確認された場合には耳道内視鏡下で除去します。これらが主因に対する治療になります。

脂漏症の治療には定期的な耳の洗浄(サリチル酸などの角質溶解成分を配合した洗浄液)のほか、栄養管理(年齢にあった栄養バランスの調整、ビタミンA・必須脂肪酸などの給与)、環境管理(高温多湿な環境の改善)を実施します。

犬の脂漏症って?原因・症状・治療・予防法まとめ【獣医皮膚科専門医が解説】

食物アレルギーが疑われた場合には除去食試験を実施します。除去食への反応が認められず、アトピーと診断された場合には、耳の洗浄によるアレルゲンの除去、耳道の保護、栄養管理(食物アレルギーへの配慮と皮膚強化食の使用)、環境管理(環境中のアレルゲンを清掃)、生活指導やストレスケアを検討します。

アレルギーが原因で起こる犬の外耳炎について【獣医皮膚科専門医による解説】

内分泌失調が疑われた場合には、血液や尿、画像検査、ホルモン検査などの健康診断を実施します。内分泌失調と診断された場合は適切な治療を優先します。

 

②副因・増悪因・素因に対するアプローチ

診断の①~④の過程で、副因、増悪因、素因のほとんどが診断できます。アプローチと並行して、それぞれの因子に対する治療を行います。

・副因

細菌やマラセチアは、基本的には洗浄で除去が可能です。必要に応じて抗菌薬や消毒薬を使用します。動物病院で処方する点耳薬には、大きく分けて2種類あり、治療薬と洗浄薬です。治療薬のほとんどに、①ステロイド ②抗菌薬 ③抗真菌薬 が含まれているため、点耳薬で効果があった時にどの成分が効いたのか判断つきにくい点が要注意です。また、抗菌薬が繰り返しの使用で耐性菌を生み出してしまうので、使用方法に気をつけましょう。

 

・増悪因

耳道の浮腫や狭窄は抗炎症薬(ステロイド薬など)の短期的な使用が効果的です。耳垢過多や上皮移動障害は洗浄で、分泌腺の閉塞・拡張、炎症は抗炎症薬や洗浄によって改善を図ります。

外耳炎により鼓膜が破れてしまう事もありますが、主因を改善すれば鼓膜の状態は良化します。鼓膜が破れてしまっている場合は、耳用洗浄液の使用を避け、生理食塩水やリンゲル液で洗浄します。

また、耳道周囲の石灰化は解除困難で、時に外科的な処置が必要となります。中耳の病変は耳道内視鏡による治療が必要となる場合があります。

 

・素因

耳の形態的問題は除去することが困難です。上皮移動を障害するような鼓膜や水平耳道の耳毛を耳道内視鏡で除去することはあります。湿性環境は気温や湿度の調整など環境へのアプローチで除去可能です。

耳の中のポリープや腫瘍は内視鏡や外科手術で除去可能なことが多いです。また、中耳炎は薬や内視鏡による治療が必要となります。衰弱や免疫が低下した状態では栄養管理や内科療法が行われます。過剰な治療処置による耳構造の損傷は処置を中止することで改善が認められます。

 

外耳炎の予後

外耳炎の原因がミミダニや異物などの場合は根治が期待できますが、そのほかの原因によるものでは継続した治療や管理が必要となります。また、『なぜ外耳炎が起こっているか』を突き止めることが最も重要だと言えます。

 

獣医師からひとこと

外耳炎の原因は様々で、それぞれの原因に応じた治療を行うということがお分かりいただけましたでしょうか?原因によっては完全に除去することが難しく、治療を続ける必要がある場合も多いのですが、適切な治療と処置により状態がかなり改善したというケースもあります。耳のトラブルを起こしやすい犬はぜひ動物病院で定期検診を受けてみてください。

ピックアップ記事

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA