犬のニキビダニ症って?原因・症状・治療・予防法まとめ【獣医皮膚科専門医が解説】

皮膚病解説

健康な犬の皮膚にも、寄生虫がいるって知っていますか?実は同じような寄生虫が人の皮膚にもいることがあります・それがニキビダニです。

ニキビダニがいても皮膚が健康な犬もいれば、ダニによる皮膚病になってしまうこともあります。一体なぜなのでしょう?もしニキビダニによる皮膚病になってしまったら、治療やスキンケアはどうしたらよいのか、詳しく解説していきます。

 

■ ニキビダニ症とは

ニキビダニは、主に毛穴に常在する寄生虫です。感染ルートとしては、母犬から授乳時に伝播するといわれています。毛穴の中でダニが増えずに大人しくしてくれている間は特に問題はありませんが、何らかの要因でダニが増えると皮膚炎の症状を生じます。

※ニキビダニ症についてはこちらもご覧ください

犬猫の毛包虫症(ニキビダニ症)って?原因・症状・治療・予防法まとめ【獣医皮膚科専門医が解説】

国内ではブルドッグ、ボストン・テリア、ウエストハイランド・ホワイト・テリア、シー・ズーにおいて、比較的多く認められます。

 

■ ニキビダニ症の皮膚症状

皮膚症状は左右対称に分布し、特に顔面、頭部、手足の先によく認められます。重症例では体にも広範囲に症状を認めます。

① かゆみ

ニキビダニが増えただけではかゆみは軽度です。ブドウ球菌の感染をともなった場合は、かゆみが強くなります。

 

② 発疹

ニキビダニは毛穴を障害するため、初期に毛穴に一致したブツブツや脱毛、赤みが認められます。また、毛穴の入り口にフケが詰まって広がった発疹(コメド:写真a)も認められます。ブドウ球菌の感染があると、のたまり(写真b)が認められます。感染が重度の場合には、皮膚の腫れやえぐれ、出血が生じることがあります(写真c)

③ 皮膚以外の症状

免疫力が低下しているケースでは、活動性や食欲、排便、排尿などに変動が認められることがあります。一般状態がかなり悪いこともあるため、注意が必要です。

 

■ ニキビダニ症の原因

① 免疫力の低下

ニキビダニが増えてしまうのは、おもに免疫力の低下が原因です。免疫力に異常をきたす要因には次のようなことが挙げられます。

  • 生まれつき免疫に異常
  • 幼若齢(3~18ヶ月齢)、老齢(4歳以上)
  • 栄養不良(成長期の犬に適切な栄養が与えられていない、栄養バランスの偏り)
  • ホルモンのアンバランス
  • 悪性腫瘍(がん)
  • ステロイドなどの免疫力低下を引き起こす薬物の使用(犬アトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患に対して長期的に使用されていた症例ではニキビダニ症の発症リスクが高くなります)

 

② ニキビダニの増殖による毛穴や皮膚の障害

ニキビダニが毛穴の中で増えると、毛穴が壊れることがあります。重症例では皮膚バリア機能の低下が起こります。

 

③ 細菌感染

ニキビダニが増えて毛穴や皮膚バリアのコンディションが悪くなると、ブドウ球菌の感染を併発することが少なくありません。

 

■ ニキビダニ症の診断

ニキビダニは皮膚掻爬物直接鏡検(スクレーピング検査:皮膚の表面を掻き取り寄生虫を見つける検査法)で検出可能です。毛穴の中にいるニキビダニを削り出すため、検査時に少量の出血を伴うことがあります。また、毛検査でもニキビダニを検出することができます。ノミやヒゼンダニと異なり、ニキビダニの検出率は高いです。膿を伴う症例では、ブドウ球菌の検出を併せて行います(細胞診、細菌培養同定検査、薬剤感受性検査)。

高齢でニキビダニが検出された場合は、重篤な病気が隠れていることも少なくないため、一般状態に応じて総合的な健康診断が必要となります。

 

■ ニキビダニ症の治療

① 一般的な薬物療法

ニキビダニには駆虫薬が用いられます。ブドウ球菌の増殖を併発している場合、抗菌薬が使用されますが、スキンケアである程度管理できます。ニキビダニ症の原因によっては、例えばホルモンのアンバランスがあればホルモン調整剤による治療、悪性腫瘍であれば外科手術や抗がん剤治療などが必要になることもあります。

② スキンケア

ニキビダニ症はスキンケアのみで対応するのが難しいことも少なくありません。適切な駆虫療法、原因となった病気の治療と並行して補助的にスキンケアを行いましょう。ニキビダニ症に対する洗浄のポイントは、毛穴のクレンジングでニキビダニをかき出すこと、ブドウ球菌増殖をともなった場合は適切な抗菌製剤を使用することです。

入浴では毛穴のクレンジング効果と軽い殺ダニ効果を期待できる硫黄泉が推奨されます。シャンプー硫黄、サリチル酸が配合されたものが毛包のクレンジングとして期待できます。過酸化ベンゾイルが毛穴のクレンジング効果と抗菌作用が期待できますが、脱脂・漂白作用などの刺激性に注意する必要があります。ブドウ球菌の増殖を伴う場合は、クロルヘキシジンなどの抗菌成分、マイルドな抗菌成分を配合した洗浄剤の部分的な併用を検討します。

症状が重度で皮膚の腫れやえぐれ、出血が強い場合、原因となった病気の影響で皮膚のコンディションが悪い場合(たとえばホルモンの異常があって、皮膚が薄い、脱毛が重度など)は、シャンプー自体が刺激となることもあるため、入浴処置のみにとどめることも検討したほうがよいでしょう。

保湿剤の制限は特にありませんが、洗浄後には保湿処置をおこない、洗浄による肌リスクを低減しましょう。また、皮膚のえぐれや出血がある場合には油剤で表面をカバーすることも検討します。

③ その他

年齢ステージに合った適切な栄養バランスの食事に調整します。また、状況に応じて乳酸菌製剤などの免疫を賦活するサプリメントを併用します。

 

■ ニキビダニ症の予後

ニキビダニ症の原因が分かり、それがコントロールされ、駆虫療法が奏効した場合には3~6ヶ月ほどで寛解します。悪性腫瘍やホルモン疾患など、重い病気があるケースでは、完治が期待できないことがあります。

 

■ 獣医師からひとこと

ニキビダニの駆虫薬は昔と比べると安全に使用できる薬が増えてきました。ですが、駆虫薬の投与だけでなく、ニキビダニが増えてしまった原因に目を向けることが大切です。犬がニキビダニ症と言われたけど、健康診断はまだという方はかかりつけの動物病院でぜひ受けてくださいね!

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