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愛犬の皮膚が薄くなっている時に考えたい3つの原因

犬 ステロイド皮膚症
コラム

健康な皮膚と比べて皮膚が薄くなり、皮膚のシワシワと血管が目立っています

 

■ 今回の質問

「愛犬の皮膚が薄くなって皮がむけている気がします。何かの病気でしょうか?」というご質問を頂きました。実はこれはかなり多い質問で、至急対処が必要な場合があります。今回も獣医皮膚科専門医が丁寧に解説してまいります。

 

■ 皮膚はどうなっている?

実はこれ皮膚が薄くなっている状態です。皮膚の中の『表皮』が薄くなる事で、皮膚に張りがなくなったり、皮膚の血管が浮いて見えたりします。『表皮』は外界の微生物の侵入を防いだり、皮膚の水分を保持する機能があるため、『表皮が薄くなる事で皮膚病になりやすく』なります。

犬 シワシワ 血管 かさぶた

皮膚のシワシワと血管が目立っています。さらに、細菌感染により黄色いカサブタが出来ています。

 

■ なんで皮膚が薄くなる?

皮膚が薄くなる原因に『ステロイド』というホルモンが関与しております。『ステロイド』は副腎という臓器が分泌するホルモンであり、動物にとって必要不可欠な存在になります。しかし、このホルモンが過剰になる事によって『皮膚が菲薄化(薄くなる事)』が引き起こされます。それではどのような時に、ステロイドが過剰になってしまうのでしょうか?以下に3つの原因を紹介します。

 

① 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

これは内分泌疾患の1つであり、『副腎が頑張り過ぎてホルモンを過剰に分泌してしまう』病気となります。ステロイドホルモンが過剰に分泌された場合、皮膚が薄くなっていきます。また、筋肉が萎縮する事でお腹の重みを支えきれず、『腹囲膨満』といるビール腹のような状態になる事でも知られています。その他の症状として、『多飲多尿』と呼ばれる『水をたくさん飲む/オシッコをたくさんする』という状態にもなるので、愛犬の様子を観察して早めに気付いてあげて下さい。

 

② ステロイド薬の内服

ステロイドというと『副作用』の事をイメージされる方もいるかもしれませんが、使い方によっては非常に優れた薬です。皮膚病だけでなく多くの病気で使用する機会が多く、特に治療経過が長い慢性疾患においては、長期間のステロイド内服が必要になります。しかし、長期間の投与によって、皮膚の菲薄化/腹囲膨満/多飲多尿といった症状が引き起こされる可能性が高くなります。この際は、他のお薬との併用や、お薬の切り替えを検討する必要も出てくるので、愛犬からのサインを見逃さないようにしてあげて下さい。

 

③ 外用ステロイド薬の塗布

同じくステロイド薬の影響になります。ステロイド薬の内服と違って部分的な使用となるため、腹囲膨満や多飲多尿という症状が出ることは少なくなります。しかし、皮膚の菲薄化は引き起こされてしまいます。ステロイド薬によって引き起こされる皮膚の菲薄化を『ステロイド皮膚症』と呼びます。外用ステロイド薬の誤った使用によって、『ステロイド皮膚症』が人為的に引き起こされてしまうケースが多いので、より詳しく解説したいと思います。

 

■ ステロイド皮膚症って?

外用ステロイド剤は痒みや皮膚炎を緩和するには有効ですが、長期的な仕様では皮膚を薄くしてしまう副作用があります。その結果、皮膚が剥けたような状態になり、これを『ステロイド皮膚症』と呼びます。症状の重症度に合わせて、強度の低いステロイド製剤への変更、投与間隔の調整、ノンステロイドタイプの外用剤に切り替える必要が有ります。

動物用外用ステロイド製剤

ステロイドの強度はWeakからStrongestまで5つの段階があります

ステロイドの強度が強いほど、炎症や痒みを抑える効果が高い一方、ステロイド皮膚症を引き起こす可能性も高くなると考えられております。(その他、薬の基剤や頻度によっても可能性が左右されます。)その為、症状の緩和に合わせて、ステロイドの強度を下げていく必要があります。

ステロイド 種類

症状の緩和に合わせたステロイドの使用が重要

 

よくある失敗例として、

  • 「一度この薬で良くなったからずっと使っている。」
  • 「早く良くしてあげたいから1日に何度も何度も塗っています」
  • 「自分が使っている薬を愛犬にも使ってる」

といった理由が挙げられます。愛犬を痒みから解放してあげたいのは私達も同じです。『急がば回れ』という言葉があるように、獣医療も同じところがあります。正しい方法で正しい回数使ってあげる事が治療の近道になるので、深呼吸して頑張っていきましょう!

 

ここまでの解説を読んで、「ステロイドを使いたくない」と思った方もいるのではないでしょうか。気持ちはとても分かるのですが、ステロイドは使い方を間違えなければとても素晴らしいお薬です。実際、国際的な『犬アトピー性皮膚炎の治療ガイドライン』にステロイドが含まれております。局所性病変、つまり、症状が部分的な場合、外用ステロイド薬を使う事が推奨されております。

犬アトピー性皮膚炎の治療ガイドライン

多くの研究によって定められたガイドラインからもステロイドの有用性が垣間見えます

 

■ 外用ステロイド薬を正しく使用するとこんなに良くなります

外用薬によりアトピー性皮膚炎と再発性膿皮症が顕著に改善した犬の1例

 

■ まとめ

いかがでしょうか。『皮膚が薄くなったかな?』と思ったら、それは愛犬からのサインかもしれません。皮膚病ではなく、内分泌疾患の可能性もあるので、お早めに動物病院や獣医皮膚科医に御相談下さい。ちなみに『ステロイド皮膚症』になった場合、皮膚が正常な状態に戻るまでには薬をやめてから3〜6ヶ月要することもあります。

また、いつの時代も、どんな薬も『光と影』があります。光と影どちらも理解した上で使い分けをする必要を感じます。『これなら大丈夫!』『うちの子が良くなったから他の子も良くなる筈!』と考え込むのではなく、色々な可能性を考えながら検査や治療を進めていけたら幸いです。

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