アトピー性皮膚炎と食物アレルギーが改善した犬の1例

皮膚トラブル症例

犬は皮膚トラブルがよく認められる動物です。動物病院に受診する犬の約30%は、皮膚や毛の問題を主訴にしています。特に子犬の時期は皮膚の抵抗力が十分ではないため、菌や寄生虫による感染症などがよく認められますが、他の皮膚病に注意が必要です。

 

■ 8才 ✕ 柴犬 ✕ 痒がる

8才の柴犬さんが「顔のかゆみが子犬の頃から続いている」とのことで病院に来院されました。目の周りやあごに赤みや脱毛が認められ、足先も舐めているとのことでした。子犬の頃から続くかゆみ、その原因は何なのでしょうか…?

このような症状を示す皮膚炎にはアレルギー性皮膚炎があげられ、特に食物アレルギーや犬アトピー性皮膚炎が疑わしいと考えられました。

 

■ 柴犬はアトピーになりやすい犬種

犬アトピー性皮膚炎は、『長く続く痒み』が特徴の皮膚炎です。

うちの犬、アレルギーかも!?


他にもアトピーになりやすい犬種として、シーズー、ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア、フレンチブルドッグ、ボストンテリア、ゴールデンレトリバーなどがあげられますが、全ての犬種に起こる可能性があります。

この皮膚病では、症状の見られる部位に特徴があります。眼や口の周り、耳、肘の内側、手足の先、腋(わき)、股などに、左右対称性に症状が認められます。
症状には痒みや皮膚の赤み、脱毛、色素沈着(皮膚が黒い)、苔癬化(ゴワゴワした皮膚)などがあります。

 

■ 食物アレルギーの可能性もあります

症例の柴犬さんは生後7ヶ月齢時から皮膚に症状を認めています。アレルギー症状が発症したケースの中にはアレルギーの原因が食物にある、いわゆる食物アレルギーの可能性もあります。

大掃除で愛犬のアレルギーが改善する理由

食物アレルギーの診断は食物アレルゲンを取り除いた、またはアレルギー反応を起こしにくいように加工された食事に切り替えて、皮膚の痒みが改善するかどうか調べます。この際の注意点は指定された食材以外は与えないことが重要です。味の付いたお薬やサプリメント、お野菜や果物も中止してもらいます。診断は、指定された期間を決められた食事を与えて(多くは2ヶ月)、症状の改善の状況を観察します。

 

■ 今回の柴犬さんの場合

今回の柴犬さんはフードを療法食に変えたところ、症状には改善を認めましたが、完全には消えませんでした。したがって、食事のアレルギーと環境のアレルギー(アトピー性皮膚炎)が併発していることが考えられました。『食物アレルギーだけ』『アトピー性皮膚炎だけ』というより、併発しているケースが多いので注意しましょう。その上で、食物アレルギーが重め、あるいは、アトピー性皮膚炎が重め、などのバランスをみていきます。

また、このようなケースでは食べると痒くなる食物は与えないように配慮しながら、残った痒みをアレルギーの治療薬で抑えます。5ヶ月後の再診時には、このようにスッキリとしたお顔になりました。(右が治療成功後となります。表情の違いまで分かりますね!)
アトピー性皮膚炎治療成功後の写真

 

■ まとめ

続く痒みは憂鬱ですよね。動物も同じく、大きなストレスになります。痒みがなくなると犬も元気になります。アレルギーは残念ながら治ることが大きく期待できない皮膚トラブルですが、薬以外のアプローチを組み合わせながら総合的に管理することで、良好な状態を管理できます。ワンちゃんの続く痒みにお困りの方は、かかりつけの動物病院に相談してみて下さいね。

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