犬猫用かゆみ止めの成分はなんですか?
ペットが皮膚病になって動物病院を受診した時に、「かゆみ止め」を処方された経験がある方は多いのではないでしょうか。
■ かゆみ止めは「かゆみ」を「止める」だけなの?
厳密には、かゆみだけ止める薬は存在しません。かゆみは皮膚の炎症の過程で生じることが一般的で、汎用されるかゆみ止めの薬は炎症を緩和する効果も併せて持っています。また、炎症を起こす過程は体の免疫反応が関わっています。したがって、炎症を緩和する効果がある薬は、免疫を抑える力を持つ可能性があります。
■ よく使われるかゆみ止めについて
汎用されるかゆみ止めの成分をみてみましょう。
・ステロイド(プレドニゾロン、プレドニン)
ステロイドはホルモン製剤で、実は健康な体内でもステロイドが作られています。ステロイドはストレスホルモンともよばれ、体にストレスがかかった時に放出されるホルモンです。
薬としては、炎症が起こす様々な細胞、炎症が起こる過程のいろいろなポイントを押さえます。したがって、かゆみを緩和する力が強い特性があります。また、即効性も兼ね備えていて、投与してから4時間程度でかゆみの緩和が始まります。ステロイドは炎症や免疫を抑える力も兼ね揃えています。少ない量で飲んだ場合は、炎症を抑え、高い量で飲んだ場合は免疫を抑える力が強くなると考えられています。
ステロイドはかゆみに対して高い効果と即効性が期待できる薬ですが、無計画に投与すると副作用が問題となります。先ほど述べたようにステロイドは体の中でもつくられているため、過剰に投与すると体の中のステロイドがつくられない体質になる危険があります。
そのほか、糖尿病、胃腸障害、肝障害、過食、多飲多尿、パンティング、脱毛、皮膚の傷が治りにくくなる、感染症(免疫抑制状態)、などのリスクがあるため、定期的に健康状態をモニターしながら使用することが推奨されます。ステロイドは犬・猫で使用され、飲み薬、塗り薬、注射などがあります。
・シクロスポリン(アトピカ)
アトピー性皮膚炎など、特にアレルギー性の皮膚病で悪さをする細胞(リンパ球)の活動を抑える薬です。
かゆみを緩和する力はステロイドに匹敵しますが、即効性はありません。投与してから3〜4週間で効果を実感する場合が多いとされます。リンパ球は免疫反応の中心的な役割を果たすため、この細胞を抑えるシクロスポリンは免疫抑制効果を併せ持っています。一方で、ステロイドのように様々な細胞や炎症の反応を抑えるわけではないので、副作用はステロイドよりも軽い傾向があります。
代表的な副作用としては、胃腸障害、歯肉が盛り上がる、イボの発生、感染症(免疫抑制状態)などが挙げられます。投与にあたっては、定期的な健康状態のモニタリングが推奨されます。シクロスポリンは犬・猫で使用され、飲み薬のみとなります。
・オクラシチニブ(アポキル)
2016年発売の新薬『アポキル』
アトピー性皮膚炎などにおいて、皮膚で生じるかゆみや炎症反応を生じる物質(サイトカイン)の伝達をブロックする薬です。2016年に日本で発売された比較的新しい薬です。かゆみを緩和する力はステロイドやシクロスポリンに匹敵し、ステロイドと同等の即効性を有します。薬として抗炎症作用や免疫抑制作用は有しますが、長期的な投与においても比較的安全性が高い薬であると考えられています。
代表的な副作用には胃腸障害、尿のトラブル、感染症(免疫抑制状態)などが挙げられます。投与にあたっては、定期的な健康状態のモニタリングが推奨されます。オクラシチニブは犬でのみ認可されていて、飲み薬のみとなります。
・抗ヒスタミン剤
人の花粉症に汎用される薬です。抗ヒスタミン剤は、その名の通りヒスタミンに拮抗する薬です。ヒスタミンは、皮膚で炎症が起きた際にかゆみを起こす成分の一つです。この成分をブロックすることでかゆみを緩和します。抗ヒスタミン剤は、ほかの薬を比べるとかゆみに対する効果は低いとされます。また、効果が出るまでに1〜2ヶ月ほどの期間を要することも少なくありません。
一方、免疫抑制の力やその他の副作用の問題が少ない薬ですので、長期的に使用する上ではメリットがある薬です。犬・猫で使用され、飲み薬、塗り薬、注射などがあります。
■ まとめ
このように犬や猫で使われるかゆみ止めの特徴は様々です。この薬が絶対良い!この薬は悪い!ということではなく、かゆみを起こす病気の種類、年齢、ライフスタイルなどによって選択される薬は異なります。また、場合によっては複数のかゆみ止めを組み合わせて使用することもあります。それぞれの薬の特性を正しく理解しましょう。
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