愛犬がマラセチア性皮膚炎に!私にも出来ることってありますか?

犬 マラセチア性皮膚炎
スキンケア

■ ジメジメしてきたら要注意!

なんだか愛犬が身体をかゆがっている・・・または愛犬の身体がベタベタして変な臭いがする・・・といった経験はありますか?そういう場合は、もしかすると『マラセチア性皮膚炎』になっているかもしれません。今回は、夏になると多くなる『マラセチア性皮膚炎』の対処法について解説します。

 

■ マラセチア性皮膚炎って?

マラセチアとは、真菌(カビ)の一種で、健康なワンちゃんの皮膚にも存在します。その常在菌であるマラセチアが、何らかの原因により異常に増殖して皮膚トラブルを起こした状態をマラセチア性皮膚炎と言います。

マラセチア性皮膚炎 顕微鏡写真 上の写真の中央でひょうたん型に見えるものがマラセチアです。マラセチアは皮脂を栄養として増えるので、皮膚がベタベタしやすい季節は必然的に増えやすくなります。夏は冬に比べて、マラセチア性皮膚炎の発症率が2倍も多くなります。

 

■ なんでマラセチアが増えるの?

マラセチアは健康な状態でも犬の皮膚(ヒトの皮膚にも!)に存在していますが、何らかの要因によって、マラセチアが過剰に増えてしまいます。要因は幾つもあるのですが、下記のような例が挙げられます。

  • 温度や湿度といった環境の変化
  • 加齢やホルモン疾患による皮膚のバリア機能の低下
  • アトピーや脂漏といった体質による皮脂の増加
  • 脂質と糖質のバランスが悪い食事による栄養障害
  • 不適切なスキンケア

このような要因が背景となり、皮膚に炎症が起こり皮膚のpHが上がると、さらにマラセチアにとって増えやすい環境が出来上がり悪循環となります。特にアトピー性皮膚炎のワンちゃんでは、マラセチアの増殖が高頻度でみられ、皮膚症状の増悪因子の一つとして注目されています。

◆詳しい要因の解説は下記記事をご覧下さい。

うちの子、皮膚がベタベタしてて臭いんです…どうしたらいいの? 〜犬のマラセチア性皮膚炎〜

■ マラセチア性皮膚炎になりやすい犬種(好発犬種)

マラセチア性皮膚炎になりやすい犬種は多く存在し、獣医師の間でも飼い主さんの間でも、一般的な皮膚病として知られています。

  • ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
  • アメリカン・コッカー・スパニエル
  • イングリッシュ・コッカー・スパニエル
  • シー・ズー
  • ミニチュア・シュナウザー
  • ダックスフンド
  • トイ・プードル
  • チワワ
  • ビーグル
  • バセット・ハウンド
  • ゴールデン・レトリバー
  • ボストン・テリア
  • ブル・ドッグ

マラセチア性皮膚炎 好発犬種

さらにマラセチア性皮膚炎になりやすい身体の場所があります。

  • 口まわり
  • 足先(指の間)
  • 首の内側
  • 脇の下
  • 内股
  • 肛門周囲
  • 外陰部
  • 皮膚のシワ

これらの部位は皮膚の重なりが多く、皮脂が蓄積しやすいため、ジメジメベタベタしてしまいます。そのような環境であるため、マラセチアが増えやすくなってしまいます。

マラセチア性皮膚炎 好発部位

■ マラセチア性皮膚炎の症状は?

マラセチア性皮膚炎の症状として代表的なものは、『かゆい』『赤い』『ベタベタする』です。他にも以下のような症状が見受けられます。

  • かゆい
  • 赤い
  • ベタベタする
  • ベタつくフケやかさぶたが出る
  • 毛が抜ける(脱毛)
  • 独特の甘ったるい臭いがする

さらに慢性化すると

  • コケが生えたようなブツブツ、ゴツゴツした硬い皮膚になる(苔癬化:たいせんか)
  • 色素沈着して黒くなる

という皮膚の状態になってしまいます。勿論、このような状態ではワンちゃんのQOLが低くなってしまうので、これらの症状からワンちゃんを救ってあげましょう!

 

■ マラセチア性皮膚炎の治療

マラセチア性皮膚炎の治療としては大きく2つあります。

  1. 全身療法:抗真菌薬内服薬(飲み薬)
  2. 外用療法:塗り薬、薬用シャンプー

皮膚症状が軽症で、病変が局所的である場合は、抗真菌薬内服薬は使わずに外用療法のみで治療することが可能です。

● マラセチア性皮膚炎の外用療法

外用療法として、以下のような外用薬を1日1〜2回塗る事が例として挙げられます。

  • クロルヘキシジンが配合された消毒剤で患部を消毒する
  • ケトコナゾール、ミコナゾール、テルビナフィンなどの抗真菌薬が配合された外用薬を塗る(クリーム、ローション、スプレー、ジェルなど色々な剤形がある)

また、マラセチア性皮膚炎の治療において薬用シャンプーもとても効果的です。薬用シャンプーを選ぶ際には、病気の重症度や背景にある病気(アトピー性皮膚炎、脂漏症、角化異常症、内分泌疾患など)を考慮した上で、愛犬に合ったシャンプーを選んでもらいましょう。以下にシャンプー成分の特徴と適応を紹介します。

  • マラセチアの除去:2%硝酸ミコナゾールや2%クロルヘキシジン、ピロクトンオラミンが配合された薬用シャンプー
  • 皮脂の除去:サリチル酸や二硫化セレン、ホホバオイルなどが配合された薬用シャンプー
  • 皮膚負担の軽減:低刺激でかつ保湿成分が配合されたシャンプー

こういったものを用い、週に2回洗浄し、それを3週間続けることが効果的です。また、ただ洗浄するのではなく「保湿」することもとても大切なことです。意外に思われるかもしれませんが、シャンプーをする事で皮膚は乾燥してしまいます。(だから私たちはお風呂上がりに、保湿液や乳液をつけるんでしたね!)その為、シャンプーを頑張っても保湿をしないと、皮膚にダメージが加わり、マラセチアが増えやすい環境が整ってしまいます。

「マラセチアが増えているから、このシャンプーで良いんですよね?」というご質問を頻繁に頂きますが、この考え方は注意が必要です。『マラセチアを除去する』と『マラセチアが増えないようにする』事は全く違います。勿論、使うシャンプー剤も異なってきます。『マラセチアを除去する』シャンプーは往々にして刺激性が強いものが多いため、長期間使う事は皮膚に対してのダメージとなります。

マラセチアが増えている⇒マラセチア除去シャンプー使う⇒マラセチア除去⇒心配だからずっとこのシャンプー⇒皮膚にダメージ⇒マラセチア増える⇒マラセチア除去シャンプー⇒….

という無限ループに陥らないためにも、『なぜマラセチアが増えてしまっているか?』をしっかり考えてあげましょう!

 

■ まとめ

いかがでしょうか?今回は対処法を中心に解説させて頂きました。しかし、マラセチア性皮膚炎を治す上で最も大切なのは、『なぜマラセチアが増えてしまっているか?』を考える事です。「うちの子元々ベタベタ肌体質だから…」と思われるかもしれませんが、アトピー性皮膚炎が原因でベタベタ肌になっている子もいれば、食事が合わなくてベタベタ肌になっている子もいます。理由が様々なので、選ぶシャンプー剤も、治療法も異なってきます。

例えば、洗顔製品のプロアクティブも、米国人用と日本人用で成分異なってますよね。さらに同じ症状でも、プロアクティブが合う人も合わない人もいますよね。少し大変かもしれませんが、愛犬に合う治療方法を粘り強く探してみる事をオススメします。

うちの子、皮膚がベタベタしてて臭いんです…どうしたらいいの? 〜犬のマラセチア性皮膚炎〜

うちのシー・ズーはベタベタなんですが、病気ですか?

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