犬の耳ケアについて – 原因&洗浄方法 –

スキンケア

犬が動物病院を受診する理由の第1位は皮膚疾患で、続く第2位は耳疾患です。皮膚と耳を併せると、動物病院に来院する40~45%の症例を占めるとも考えられています。さらに、皮膚と耳のトラブル(とくに外耳炎)は併発しやすく、アトピー性皮膚炎などのアレルギー性皮膚疾患や脂漏症などの分泌腺のトラブルなど、長期的な管理が必要な皮膚疾患で併発しやすい傾向にあります。また、皮膚に症状が出る前に外耳炎を起こす場合も少なくありません。

今回は耳のケアを行う前に知っておきたい耳の構造耳の洗浄が必要なケース洗浄液を用いた洗浄方法について詳しくご説明します!

 

■ 耳の構造を理解し、洗浄剤の必要性を判断する

耳の構造

耳は聴覚や平衡感覚を担う重要な器官で、外側から順番に耳介、耳孔、外耳道、鼓膜、中耳、内耳と呼ばれる構造からなります。

ヒトの外耳道は耳孔から頭の中の方向へまっすぐに伸び鼓膜に達します。一方、犬では耳孔から外耳道は一度垂直方向に走り、そこでL字型にカーブして頭の中の方向へ伸びて鼓膜に達します。この外耳道の構造をそれぞれ垂直耳道および水平耳道とよびます。

外耳道の長さに関してはさまざまな報告がありますが、犬種によって3~10cm程度とされます。

耳介から外耳は皮膚と連続していて、表皮、真皮、毛、脂腺、汗腺など皮膚と似たつくりになっています。毛や分泌腺は水平耳道よりも垂直耳道のほうに多く存在します。

鼓膜は上皮成分からつくられ、弛緩部と緊張部に分かれます。弛緩部には耳小骨が付着し、鼓膜が音で振動すると、耳小骨を経由して内耳へ振動を伝えます。

中耳鼓室とよばれる空洞状の構造で、空気の入れ替えや圧の調整をおこなっています。中耳は耳管とよばれる構造で鼻とつながっています。

内耳神経が豊富に存在し、主に聴覚を担う蝸牛平衡感覚を担う前庭から構成されます。

外耳は外環境から耳の中に異物が侵入しないように、外耳の表皮に当たる部分のターンオーバー、毛、分泌腺の活動が大きな役割を果たします。外耳に存在する汗腺は耳垢腺とよばれ、耳垢も異物の侵入を防いでいます。耳垢は鼓膜に近いところからゆっくりと耳孔の方へ向かい、最終的に外へ排泄されます。この現象を耳垢の上皮移動とよび、耳には自浄作用があることがわかります。

※耳の構造についてはこちらもご覧ください

犬の耳の構造はどうなっているの?

 

■ 耳のケア

犬の耳をのぞく獣医師

・耳の洗浄をおこなうケース

正常な耳は自浄作用があるため、耳垢は自然に排出されます。したがって、トラブルのない耳に対しては積極的な洗浄は必要ありません。耳垢が外耳にあることは正常で、まったく耳道に耳垢のないことはまれです。正常な耳垢を無理にとろうとすると、かえって外耳炎の原因となります。

一般的に耳の洗浄が必要になる例として下記が挙げられます。

  • 外耳に異物や寄生虫が存在
  • アトピー性皮膚炎や食物アレルギーに伴って炎症が頻発
  • 脂漏症にともなった外耳の過剰な皮脂汚れ
  • コッカー・スパニエルに頻発する耳垢腺の過形成
  • 短頭種などにおける先天的な耳道の狭窄に伴う耳垢の排出不良

耳の洗浄が必要性かどうかは、耳鏡検査耳道内視鏡検査によって耳道および皮膚の評価をおこなって判断することが大切です。

 

・洗浄方法

洗浄には、耳道洗浄剤によるマッサージ法がよく使われます。耳の汚れの除去に綿棒を使うと、耳垢を奥に押し込んでしまう可能性があるため、綿棒は耳孔から耳介の部分に限って使用しましょう。

耳道洗浄剤によるマッサージ法を実施する前には、外耳と鼓膜の状況を確認しなければなりません。炎症などで外耳の壁が損傷している場合は、耳道洗浄剤に含まれるアルコールなどの成分が刺激となります。また、鼓膜が損傷している場合は、耳道洗浄液が中耳に入り、製剤によっては聴覚に毒性を生じる可能性があるため、洗浄や洗浄液の選択に十分な注意が必要です。

耳が腫れて耳鏡が入らない、膿がたまって確認できない際には人肌に温めた生理食塩水やリンゲル液などを用いて洗浄を行います。たっぷりと外耳に入れた生理食塩水の水位がどんどん下がる鼻から液が出てくるなどの現象が認められた場合は鼓膜が損傷している可能性が高いと考えられます。

 

■ まとめ

犬の耳の汚れが強い時は、ただ汚れをキレイにすればよいとは限りません。耳の奥は皮膚と違って中が見えづらい部分です。病気がないか、耳の中を洗浄しても大丈夫なのか、まずは診察を受ける事が大切です。かかりつけの動物病院に相談してみてくださいね。

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