愛犬に皮膚トラブルが出た時 何を考えたらよい?【獣医皮膚科専門医が解説】

コラム

動物病院のおいて犬の皮膚トラブルを解決するために必要になるのが、『問診』というファーストステップです。何故かと言うと、これが大きなヒントになるからです。問診で確認する事項は年齢や性別、予防状況などの症例の情報や生活環境、食事内容、スキンケアの状況、これまでの経過など多岐にわたります。本記事では、愛犬に皮膚トラブルに生じたときに確認しておきたい項目を紹介したいと思います。

 

■ 確認したい事

犬種の写真

・品種

皮膚トラブルの中には、特定の品種で起こりやすいもの(好発品種)があります。これらの皮膚トラブルは、一般的に遺伝や品種による皮膚の構造が関係しています。例えば、犬のアトピー性皮膚炎は柴犬やウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアに多い、というようなことが挙げられます。

 

・毛色

毛色によって発症する疾患(とくに脱毛症)があるため、血統書に記載されている毛色を確認します。

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・年齢

現在の年齢と皮膚病の発症年齢のいずれも重要となります。若齢から発症するトラブルは、アレルギーや感染症などが一般的です。一方、中高齢で発症する皮膚トラブルには、免疫疾患や腫瘍、皮膚以外の臓器トラブルにより生じるもの(ホルモンバランスの異常による脱毛症など)が増える傾向があります。

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・性別

避妊や去勢をしていない高齢の犬では、生殖器の疾患に起因する皮膚トラブルを起こすことがあります。避妊や去勢をした犬においても、手術日、手術の方法を確認します。また、メスの個体では発情の周期にともなって皮膚トラブルが生じることがあります。発情サイクルが正常かをあわせて確認すると良いでしょう。

 

・性格とストレス

臆病な性格、攻撃的な性格などの問題と、ストレスによる問題行動の有無を確認します。皮膚の症状が出る前後の性格や行動の変化、まわりで生じた大きなイベント(引越し、地震、工事、家族構成の変化など)も確認します。
※ストレスと皮膚の関係はこちらの記事参照

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・予防状況

ワクチン、ノミ・マダニ、フィラリアなどの予防状況を確認します。とくにノミは皮膚トラブルを起こしやすい寄生虫ですが、市販のノミ取りシャンプーや首輪のみでは効果は不十分です。また、薬の効果が持続する期間は製品によって異なりますので、薬の製剤名や投与日も確認することが大切になります。

 

■ 生活環境

可愛い犬の写真
今では多くの犬が室内で生活していますが、庭、ベランダやバルコニー、散歩など屋外で微生物や花粉などのアレルゲンにさらされる可能性を確認します。ハウスダストマイトなどのアレルギーや季節的要因が影響する皮膚トラブルも多いため、犬のお気に入りの場所や寝床(ケージやサークル、ベッドやソファなど)が汚れていないか、室内の清掃状況、空気清浄機の設置、おもな生活環境の温度や湿度(冷暖房器具の設置状況なども含む)を確認します。

 

・ライフスタイル

睡眠、活動時間、食事、留守番、レクリエーションやご家族との触れ合いの時間を確認します。

 

・散歩コース

定期的に散歩に行っている症例では、そのコースを確認します。土や草との接触が多いルートを散歩している場合は、感染症やアレルギーなどの発症リスクがあります。その他、散歩中にほかの犬や猫と接触する可能性、不特定多数の動物が利用する施設(ドッグランなど)の使用なども確認します。また、散歩の時間帯と所要時間、紫外線の影響がありそうかなども確認します。

 

・同居動物

感染性の皮膚疾患は犬以外の動物からも伝染する可能性があります。犬では、タヌキやハクビシンなどの野生動物、その他げっ歯類や鳥類から真菌が伝播する可能性があります。接触する可能性(直接あるいは毛や糞便との接触)がある動物をすべて確認しておきましょう!

 

・ご家族の症状

ノミやヒゼンダニなどの寄生虫、皮膚糸状菌などはヒトに皮膚トラブルを起こす場合があります。犬に皮膚トラブルが認められる前後に、同居するご家族に湿疹やかゆみなどの症状が生じていないかを確認します。

 

■ 食事内容

現在与えている主食と副食(オヤツ)の内容、給与回数、量をすべて確認します。市販品を与えている場合は、製品名だけでなく、配合されている成分もチェックします。また、野菜や果物、サプリメントの給与なども確認します。食事変更やオヤツの給餌によって痒みが強くなった場合、食物アレルギーを疑いましょう。

 

■ スキンケアの状況

自宅あるいはトリミングサロンや動物病院で行なっているスキンケアの内容を確認します。毛のカット、シャンプー、保湿、爪や耳のケアなどの方法、使用製剤、頻度を確認します。

 

■ 経過

ライフスタイルに関する写真
皮膚トラブルを判定するうえで、経過はきわめて重要なチェック項目です。経過の問診は以下の点について確認されます。

 

・初発

いつ、どのような皮膚トラブル(おもに皮膚の変化 〈赤い、ブツブツなど 〉とかゆみ)が、どの部位に起こったのかを確認します。

 

・悪化と良化

初発病変が変化した場合(赤くなった後に黒くなったなど)、別の部位へ広がった場合には、その順序と期間を確認します。また、最初の病変が消えた後に別の病変が生じたなど、悪化と良化のタイミングも確認します。

 

・季節性

皮膚のトラブルが生じてから1年以上経っている場合には、季節による症状の変化があるか確認します。例えば、『毎年夏だけ痒くなる』という場合、アレルギーの関与がないか疑うヒントになります。

 

・家族歴

親兄弟犬の確認がとれる場合は、同様の皮膚トラブルがないかを確認します。その家族にも同様の皮膚症状がある場合は、遺伝的な要因が疑われます。

 

・治療歴

何らかの治療が行われていた場合は、製品名や薬物名、投与量と投与間隔、そして治療反応を確認します。治療歴には飲み薬や塗り薬だけでなく、治療用の食事や薬用シャンプーの使用も含みます。

 

・皮膚以外の症状

皮膚症状が発生する前後の一般状態を確認します。確認事項としては、活動性、体重、体温、脈拍、呼吸数、食欲、飲水量、尿量、便状態(性状と回数)が挙げられます。これは家では少し難しいところもあるので、かかりつけ医に相談してみてください。

 

■ 獣医師からひとこと

いかがでしたか?いやー、たくさんありましたね。私たち獣医皮膚科医は、これらの項目を頭に入れながら診察しています。けど、いきなり全て覚えてるのはチョット難しいですよね。そこで以下のような方法がお勧めです。

①これまでの経過を書き留めておく。
②処方されている薬の薬剤名を病院に確認しておき、再診の際に残っている薬があれば持っていく。
③持ち運びが難しい食事やスキンケア製品は、スマホなどのカメラで製品や成分のラベル部分を撮影しておく。

このようにしておくとしっかりと情報を伝えることができます。ぜひ参考にしてみてくださいね。皮膚病に悩む動物と飼い主さんをゼロにしましょう!

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