地震が動物の皮膚に与える3つの影響

地震が動物の皮膚に与える3つの影響
コラム

日本は世界的にも地震の発生が多い国で、本日(2018年6月18日)も大阪を中心に震度6の地震が起こりました。本日兵庫で出張皮膚科診察予定の獣医皮膚科医がおり、現地は交通手段をはじめとして混乱・混雑状態にあると聞いております。皆さんのご無事、そして、皆さんが愛する家族、動物たちのご無事を願っております。

私たちが出来ることとして、『地震が動物の皮膚に与える影響』に関する記事をお届けさせて頂きます。少しでもお役に立てれば幸いです。

 

■ 地震が動物の皮膚に与える影響って?

大震災の際に一人で留守番をしていた犬の中には、物音や揺れに過剰に反応するようになったり、性格の変化や問題行動が認められることがあります。大きな自然災害の後に、ヒトでは心的外傷後ストレス障害(Post Traumatic Stress DisorderPTSD)という心の病になる可能性がありますが、犬にとっても災害による精神的ストレスは、災害後もその影響が残る場合があります。上にある写真は、地震後のストレスによる自傷行為で傷ついた柴犬さんの両足です。

性格や行動の変化が震災後から生じている場合には、とくに生活環境やストレスのケアに気を配ることが重要です。

 

■ ストレスと犬の皮膚① -アトピー性皮膚炎に要注意-

犬のアトピー性皮膚炎はさまざまな要因が関わる多因子疾患と呼ばれており、関与する要因はザッと挙げて10つほどあります。この中にストレス要因があるように、今回の地震の影響が愛犬にないか注意しましょう。

  1. 遺伝的要因
  2. 免疫学的要因
  3. 環境要因
  4. 皮膚バリアの要因
  5. 分泌腺の要因
  6. 常在菌の要因
  7. 食事の要因
  8. ストレス要因
  9. 薬の要因
  10. ストレス要因

精神的なストレス要因が加わることで、かゆみが悪化する可能性があります。また、持続的なかゆみは精神的な苦痛を生み、さらに強いかゆみを起こす可能性があるので要注意です。とくに、性格や行動の異常が認められるアトピー性皮膚炎の犬では、ストレスが悪化要因として症状に関与することが少なくありません。

不規則な睡眠やご家族とのアクティビティ(触れ合いや散歩など)の減少はストレス要因につながる可能性があるので、周囲の無事が確認されたら出来るだけ普段どおりの生活をするように心がけてあげてください。犬は敏感で優しい動物なので、飼い主さんの気持ちを察することに長けています。飼い主さんがパニックになると、愛犬にも伝わってしまうため、いつものような優しい笑顔でなにごともなかったように優しく撫でてあげてください。

ストレスによりかゆみが悪化したフレンチブルドッグの写真

ストレスによりかゆみが悪化したフレンチブルドッグさん

 

■ ストレスと犬の皮膚② -多汗症に注意-

また、ストレス負荷で悪化する可能性がある犬の皮膚病に多汗症(下写真)が挙げられます。
アトピー性皮膚炎と同様、ストレスが悪化を助長させる可能性があるため、愛犬の性格や行動を把握し、できるかぎりストレス要因を取り除いてあげましょう。また、多汗症の犬においては、高温多湿な環境を回避する事も重要であり、室内であれば夏季は室温25 28℃、湿度60 70%を目標としましょう。

多汗症の犬の写真

 

■ ストレスと猫の皮膚 -外傷性脱毛に注意-

外傷性脱毛症は,過剰なグルーミング行動によって発生する脱毛症です。多くの場合,赤みやカサブタなどの皮膚症状はなく、脱毛のみが認められます。外傷性脱毛症は、下記のような要因によって引き起こされており、3と4が精神的なストレスとの関与が考えられます。

  1. ノミアレルギー性皮膚炎
  2. 外部寄生虫症
  3. 局部の違和感・疼痛
  4. 皮膚心身症

 

■ 局部の違和感・疼痛による外傷性脱毛

これらの多くは、膀胱炎,巨大結腸症,股関節異常,神経異常などが原因となり、「何か気になるなあ」「ここ痛いなあ」という思いから猫がペロペロペロペロ舐めすぎてしまうことで引き起こされます。今回気をつけて頂きたいのは、『膀胱炎』です。猫の膀胱炎の約60%は特発性膀胱炎であり、これはストレスが原因となって引き起こされます。膀胱炎になった猫は、膀胱部分が気になり、下写真のように下腹部を過剰に舐めてしまい、脱毛が生じます(下写真)。

猫の外傷性脱毛の写真

 

■ 皮膚心身症による外傷性脱毛

猫においても皮膚心身症という、精神的なストレスによる皮膚病が存在します。症状はアレルギー性皮膚炎と似ているので区別が難しいのですが(参考文献)、今回の地震後からかゆみが強くなった場合には注意してください。地震の揺れの影響で、キャットタワーの場所を変えた、家族に落ち着きがない、といったことも原因となります。

 

■ まとめ

精神的なストレスが動物の皮膚に与える影響について執筆しました。今後このような皮膚症状が出てくるようであれば、注意してみてください。通常通りの生活を送るのが一番ですが、『言うが易し』という状況にあると思います。愛犬・愛猫を守れるのは皆さんだけなので、ご自身の安全を第一に生活なさってください。皆さんのご無事を願っております。

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