外用療法とスキンケアによりマラセチア性皮膚炎が改善したキャバリア・キングチャールズ・スパニエル

皮膚トラブル症例

■ 来院理由

初診時の写真

アトピー性皮膚炎と食物アレルギーによる皮膚炎で治療中のキャバリアさんです。内服薬で治療を受けていましたが、首から胸、肘にかけて脱毛や赤みがあり、皮膚のベタベタと痒みが良くならないために来院されました。

 

■ キャバリア・キングチャールズ・スパニエルのアレルギー

皮膚状態アップ写真

長年のアレルギーによる痒みによる掻き動作によって、皮膚が赤く、そして分厚く(苔癬化)なってしまっています。この皮膚はベタベタしていてアブラっぽい状態です。皮膚検査をしてみると、皮脂をエサにして増えるマラセチアという皮膚の常在菌が増えている事が分かりました。

 

■ マラセチアの原因は何なのでしょうか?

「マラセチアが増えている!マラセチアを減らせば皮膚は良くなる筈だ!」と思うのは少し早とちりです。何故マラセチアが増えてしまったか考えないと、真の改善には向かっていきません。

実は、アレルギー性皮膚炎(アトピー性皮膚炎や食物アレルギー)では、このような症状を示すケースが多く認められます。つまり、『アレルギーがあるからマラセチアが増える』という構造です。

そのため、アレルギー体質をを緩和してワンちゃんの生活の質をできるだけ良い状態に保つということが治療の目標となります。マラセチアだけやっつけて、アレルギーを放置していれば、必ずマラセチアは再増殖するので気をつけましょう。

犬のマラセチア皮膚炎って?原因・症状・治療・予防法まとめ【獣医皮膚科専門医が解説】

また、アトピー性皮膚炎の治療ガイドラインでは薬による治療に加えて、皮膚の症状に合わせたスキンケアを行うことが勧められています。宜しければ、下記の記事を御覧ください。

犬のアレルギーって?治療・予防法まとめ【獣医皮膚科専門医が解説】

 

■ このキャバリアさんの場合

このキャバリアさんは、スキンケア方法の変更と外用剤の使用を選択しました。

① クレンジングオイルの使用

余分な皮脂を取り除くために、クレンジングオイルの使用を開始しました。これにより皮膚に負担をかけずに皮脂を取り除く事ができます。洗浄剤の強いシャンプーで皮脂を取り除く場合、皮膚に大きなダメージを与えてしまうので気をつけましょう!

 

② シャンプー剤の変更

オイルによるクレンジングの後、皮膚に増えてしまったマラセチアを治療するための抗菌シャンプーで週2回洗ってもらいました。シャンプーは十分に泡立てて、泡に含まれた界面活性剤成分で皮脂を取り除くことをイメージしてもらいました。原液を直接皮膚にかけたり、泡立てずにシャンプーすることは、治療を逆効果にしてしまうため、気をつけましょう!

 

③ 保湿剤の開始

上記のような抗菌シャンプーで週2回も洗うと、余分な皮脂を取り除き過ぎてしまい、皮膚が刺激を受けるリスクが高くなってしまいます。このまま放って置くと、皮膚の改善は見込めません。そのため、シャンプー後には必ずセラミド配合の保湿剤をつけてもらいました。

 

④ 外用剤の開始

また、現在ゴワゴワに厚くなってしまった皮膚に対して、ステロイドの外用剤で治療を行いました。外用ステロイドは、内服のステロイド剤に比べて、①副作用が少ない、②皮膚に直接作用して高い効果が見込める、③皮膚のゴワゴワを滑らかにする、というメリットが存在します。

 

■ 運命の再診日

改善写真

左写真:初診時 右写真:2ヶ月後再診時

2ヶ月後にはこのように改善が認められました。赤くて脱毛していた皮膚が、ピンク色になり、そして発毛が認められていることが分かりますよね。「痒みも減ってきましたー!」と飼い主さん。シャンプーも外用剤も大変ではあるので、少しずつ減らしていきたいなと思います。

 

■ まとめ

アトピーの犬の肌は敏感肌なので、刺激を与えないように優しく洗うことが大切です。お湯やドライヤーの温度も熱くなりすぎないように気をつけて下さいね。

これ以上良くならないのかな…と思っていたケースでも、スキンケアや外用薬を用いた治療を取り入れると、このように皮膚の状態が良くなることがあります。犬のスキンケアをまだやっていないという方は、トライしてみてはいかがでしょうか?

同じような状態から良くなった例を知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

脂漏性皮膚炎とアトピー性皮膚炎が併発した犬の1例

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