愛犬の皮膚に赤いブツブツが・・・! 〜膿皮症の原因と治療法〜
膿皮症ってなんですか?
皆さんは愛犬の皮膚に赤いブツブツやニキビのようなものが出来ているのを見つけたことはありませんか?
これは、膿皮症(のうひしょう)といって、【皮膚に雑菌が増えている状態】です。
人でいう「とびひ」という皮膚病に相当します。「とびひ」の正式な病名は「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」といって、細菌が皮膚に感染することで発症する人の皮膚病です。皮膚を掻きむしった手を介して、水ぶくれやかさぶたがあっという間に全身へ広がる様子が、火事の火の粉が飛び火することに似ているため、「とびひ」と呼ばれています。この病気にあたるワンちゃんの皮膚病が「膿皮症」なんですね。
人にも移るの?
では、この膿皮症は人にも移るのでしょうか?家族に小さなお子さんがいる場合は特に気になりますよね。
膿皮症の原因は、ブドウ球菌という細菌の一種です。ブドウ球菌は、犬の皮膚や耳などにみられる常在菌(健康な状態でも存在する菌)ですが、何らかの原因で過剰に増殖することにより皮膚病を引き起こします。人に感染症を引き起こす黄色ブドウ球菌とは種類が異なるため、犬から人へ感染することは稀です。
しかし、犬に噛まれた場合や濃厚にスキンシップした場合などは、公衆衛生の観点から手洗いや消毒をすることをオススメします。どんなに可愛くても、動物種が違えば常在菌として保有している細菌も違うため、衛生面には注意してお互い健康的に楽しく暮らしていきたいですね。また、基本的に犬から他の犬へも感染しないと言われております。
どんな症状が見られる?
あちこちかさぶたが出来て赤くなっています
ブツブツと赤くなったり、中に黄色い膿をもったり、表面にかさぶたが出来てカサカサすることがあります。膿皮症によるかゆみは、軽度から重度と様々です。また、全身に見られる場合もあれば、症状が限局している場合もあります。
膿皮症の原因は?
では、なぜ犬は膿皮症になってしまうのでしょうか?いくつか原因が考えられますので一つずつ見ていきましょう。
①皮膚の分厚さ
実は根本的な問題に、皮膚の分厚さが関係しています。皆さんは、犬の皮膚と人の皮膚ではどちらが分厚いかご存知でしょうか? 正解は… 人の皮膚です。なんとなく、イメージとしては動物である犬の皮膚の方が分厚い気がするかもしれません。
しかし、犬の皮膚は毛に覆われており、外部の刺激から守られている為、人の皮膚よりも薄いのです。薄い皮膚では細菌が皮膚に侵入し易いため、皮膚の細菌感染が起こり易くなると言われています。下の写真は、人とワンちゃんの皮膚の組織を顕微鏡でみたものです。
顕微鏡写真を見ると一目瞭然ですね。
②皮膚のpH
また、犬の皮膚のpHがアルカリ性であることも、細菌感染が起こりやすい原因の一つである、と言われています。(人の皮膚のpHは弱酸性です)
③その他の疾患がある(二次的に膿皮症が起きている)
さらに、犬アトピー性皮膚炎やその他の皮膚病(感染症、先天性の皮膚疾患、ホルモン疾患など)を発症している犬では、二次的に膿皮症が発生しやすくなります。したがって動物病院に連れて行き、膿皮症が見つかったときに、「本当に膿皮症だけが起こっているのか?膿皮症が起こる原因となった元々の疾患が他に隠れていないのか?」というところまでしっかりと調べてもらわないといけないということになります。
皮膚だけでなく、全身の検査が必要になることもあります
④季節
膿皮症は春から夏にかけて発症しやすくなります。これは細菌が高温多湿の環境を好むからです。したがって気温が高くなってきたら、より一層愛犬の過ごす環境を清潔にするよう心がけましょう。
どんな治療法があるの?
では、膿皮症が見つかったらどうすればいいのでしょうか?正しい診断と、正しい治療が必要になりますので、すぐに動物病院へ行くことをオススメします。
動物病院で診断されたあとは、飲み薬(抗生物質)や塗り薬(外用抗菌薬)、抗菌シャンプーなどが処方されます。膿皮症の治療には、正しいシャンプー・正しいスキンケアが必須となってきます。膿皮症を発症している子は多くの場合で皮膚のバリア機能が弱っている為、シャンプー後も必ず保湿をしてあげましょう。シャンプー後に洗い流すタイプの保湿剤のほか、洗い流さないタイプの保湿剤もあります。
最近は、消毒成分と保湿成分を含んだスキンケアスプレーも出てきており、シャンプー後の仕上げの保湿の際や、シャンプー出来ない日も比較的手軽に処置が出来ます。
抗菌シャンプーについての解説はこちらを合わせてお読みください。
犬のクロルヘキシジンについて解説|犬の抗菌シャンプーの成分の一つ
まとめ
膿皮症は、皮膚の表面にもともと存在する菌が増殖し、皮膚や毛穴に侵入して炎症を起こす皮膚病です。
飲み薬による全身療法と、薬用シャンプーや外用抗菌薬による局所療法を併用して治療がなされます。抗菌療法により多くの場合は3〜4週間で治癒に向かいますが、菌を0にすることは出来ません。また、再発しやすい病気でもあります。
治療に対する反応が悪い場合は、使っている抗菌薬が原因菌に合っていなかったり、他の疾患が隠れていることも考えられます。また、膿皮症の予防の観点からも皮膚のバリア機能を高めることは大切で、そのためには正しいスキンケアが欠かせません。
私たち人間と同様に、定期的なシャンプーや保湿による強い肌作りがポイントとなります。犬にも、シャンプー剤や保湿剤の“合う・合わない”があるので、獣医さんと相談しながら愛犬に合ったものを選んでいくことも大切です。
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