犬の外耳炎って?原因・症状・治療・予防法まとめ【獣医皮膚科専門医が解説】

犬 外耳炎
皮膚病解説

蒸し暑くなってくるこの季節はわんちゃんの皮膚や耳のトラブルが増える時期です。なかでも最も多い病気が外耳炎です。再発や、時に治りにくい事もある外耳炎について詳しくご説明します。

■ 外耳炎とは?

外耳炎のイラスト外耳炎とは外耳道と呼ばれる部分に生じる炎症です。垂直耳道と水平耳道を合わせて外耳道と呼びます。詳しくは下の記事をご覧下さい。人間の耳と異なるポイントもあって、とても面白いと思います。

犬の耳の構造はどうなっているの?

■ 外耳炎の症状

外耳炎の写真最もよく認められる症状は耳のかゆみです。後ろ足で引っ掻く床に耳をこすりつける頭をしきりに振っている動作が認められます。耳の変化としては赤み、ニオイ、耳垢や分泌物の増加、フケ、耳周辺の脱毛などがあります。

 

オトスコープ(耳道内視鏡)を用いて撮影した耳の中の写真

上の写真はオトスコープ(耳道内視鏡)を用いて撮影した耳の中の写真となります。左が外耳炎の写真、右が正常な耳の写真です。正常な写真と比べると、外耳炎の写真は赤み、耳垢、充血があるのが分かると思います。

 

■ 外耳炎の発症

外耳炎にはいくつかの原因があります。そして炎症を悪化・持続させる要因、炎症を起こしやすい素因などが絡み合って生じます。

 

■ 外耳炎の原因

幼少期の犬猫に多いのはミミヒゼンダニという外耳道に寄生する寄生虫による外耳炎です。再発を繰り返すケースでは、アレルギーや脂漏症(過剰な皮脂やフケが特徴、シーズーやコッカースパニエルに多い)などが原因となっていることがあります。おどろくことにアトピー性皮膚炎(ハウスダストや花粉に対するアレルギー)や食物アレルギーでは、皮膚がかゆくなる前に外耳炎が出る場合があります。

また、中高齢になってから急に外耳炎が生じて繰り返す場合は内分泌疾患(甲状腺や副腎のトラブル)が原因となっていることもあります。そのほか、耳の中に小石や植物などの異物が入って外耳炎になることもあります。

外耳炎はただ単純に耳だけの問題として片付けるのではなく、環境や食事、ホルモンのバランスなども関与することを意識することが大事です。

 

■ 外耳炎の診断

耳鏡

  • 動物病院では耳鏡という器具を使用して、外耳道を観察します。また耳垢の検査を行い、寄生虫や菌の感染を調べます。
  • 耳鏡では詳しい観察が困難な鼓膜付近を検査する場合にはオトスコープと呼ばれる内視鏡を用いることもあります。
  • ときに血液検査やホルモンの検査、画像検査、アレルギー検査などを行います。

 

■ 外耳炎の治療

耳道内視鏡

外耳炎の治療には主に洗浄と点耳薬を用いますが、これらはあくまでも“取り急ぎ症状を抑える”治療になります。洗浄と点耳薬による治療を行いながら、外耳炎を起こした本当の原因の探索・管理をおこうなうことが重要です。例えば寄生虫による外耳炎では駆虫を行い、内分泌疾患ではホルモンを調節する薬を、食物アレルギーが疑われる時にはアレルギー食への切り替えを検討しなければなりません。

これらの対応で症状の管理が困難な場合は、全身療法や内視鏡による細かな処置(たとえば異物の除去)が必要となることもあります。

 

■ 外耳炎の予後

寄生虫や異物などが原因の場合は、それらが取り除かれることで完治が期待できます。一方、アレルギーや脂漏症、内分泌疾患を根本から治すことは困難です。したがって、“取り急ぎ症状を抑える”治療で症状が落ち着いた後も、再発を防ぐ為の定期的な管理が必要となります。

 

■ 外耳炎の予防法

外耳炎になりやすいリスク要因として、外耳道の湿った環境があります。シャンプーや水遊びの後は耳の中に水が残らないように意識しましょう。また、高温多湿な時期に外耳炎になりやすいのであれば、発症する時期の少し前に受診をお勧めします。

そのほかのリスクとしては、耳垢の排泄機能のトラブルなどがあります。耳垢は自然に耳の外へ出される機能を耳は持っています。しかし、短頭種や耳道内に毛が多い犬種では耳垢がうまく排泄されなくなる事があります。リスクのある犬種では、定期的な耳の検診がおすすめです。

一方で、自宅で耳を洗うことはリスクがありますあやまった洗浄剤の選択、綿棒の使用によって外耳や鼓膜が傷ついてしまうこともあります。耳の洗浄の仕方は、耳鏡で状態を確認してからでなければ判断できません。自宅での耳掃除を行いたい場合は、事前に獣医師に相談すると良いでしょう。

愛犬・愛猫の耳掃除に綿棒って使っていいの?

また、『耳の中の毛を抜いた方が良いかどうか』も気になるポイントだと思います。私たちは、『抜くのではなく、短くカットする事を推奨しております。詳しくは下の記事をご覧下さい。

教えて!犬の耳の毛って抜いて良いの? ダメなの?

 

■ 獣医師からひとこと

耳は皮膚と異なり、肉眼で症状を確認することが難しい部位です。表面から見て、問題のなさそうな耳でも、奥ではトラブルがあることも少なくありません。適切な検診やケアでわんちゃんの耳を守ってあげましょう。

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