犬猫のノミアレルギー性皮膚炎って?原因・症状・治療・予防法まとめ【獣医皮膚科専門医が解説】

これだけは知っておきたい
- 犬や猫で急激に強いかゆみが認められた場合は疑う
- 夏〜晩秋に好発し、皮膚症状は腰部と下半身に分布しやすい
- ノミの寄生が少数でも発症するため、検査においてノミの寄生を直接証明することが難しい(ノミが見つからなくても、この皮膚病の可能性を捨てられないという事です)
- 駆虫療法のみではなく、環境対策を講じることが治療上で重要なポイントとなる(うちの子はノミダニ予防しているからOK!からは卒業しましょう)
犬猫のノミアレルギー性皮膚炎とは?
主にネコノミが原因となります。ネコノミという名前ですが、猫だけでなく、犬にも寄生するのでお気をつけ下さい。(ちなみに犬と比較すると、猫は臨床症状が多彩です。)5歳齢以下で発症することが多いが、中高齢の犬や猫でも好発します。
ノミに暴露されやすい環境で生活する事で、罹患する可能性が上がってしまいます。また、ノミは暖かくなると活動性がUPする為、ノミアレルギー性皮膚炎は夏〜晩秋に好発する皮膚病となります。また、ノミにとっては暖かい室内の方がより繁殖に適しており、室内では冬の間でも寄生~産卵をくり返すことがあります。
犬猫がノミに噛まれると、犬猫の体内で抗体(ノミ唾液抗原特異的IgEと言います)が産生されます。この時点では、痒みも引き起こされず、皮膚病にはなりません。犬猫の身体に影響が出るのは、2回目以降ノミに噛まれた場合となります。つまり、ノミに再び噛まれた際に、アレルギー応答が起こる事で非常に強い痒みが引き起こされます。(ハチに刺される時、1回は大丈夫だけど、2回目以降は危ないって聞いた事ありませんか?あれと同じです。)また、飼い主さんにもノミ刺咬症を認めることがあるので、皆さんもお気をつけ下さいね。
ネコノミとは?
- 犬や猫に寄生するノミ種の90%以上はネコノミです。
- ノミは完全変態を営み、虫卵、幼虫、蛹、成虫の生活環が存在します。
- 動物に寄生して吸血するのは成虫であり、幼虫は環境に存在し暗所を好む。
- ノミの生活環は適度な温度(20〜30℃)および湿度(70%以下)を要求するため、日本においては夏〜晩秋に活発となる。
- 至適環境下における生活環は約21日とされる。
ノミに噛まれやすい条件
- 屋外飼育/多頭飼育
- 温度や湿度の高い室内
- 草むらや土に接触
- 不特定多数の犬や猫が存在する施設の利用(公園、ドッグラン、サロン、動物病院など)
- 定期的・適切なノミ予防を行っていない(市販のノミ取りシャンプーやノミ取り首輪などを使用)
- 旅行後
犬猫のノミアレルギー性皮膚炎の症状
症状としては、ノミの吸血部位を含め広範囲にかゆみが生じるのが特徴です。例えば、首をノミに噛まれた場合でも、腰にも症状が出る、という事です。症状が出やすいのは、腰部と下半身となります。症状は、強いかゆみを伴う丘疹(赤いプツプツ)と痂皮性の発疹(カサブタ)となります。犬と比較すると、猫は臨床症状が多彩であり、上記の通りではないのが注意点となります。
■ 特徴的な症状
- 犬の特徴的な症状:左写真
- 犬の特徴的な症状(アップ):中央写真
- 猫の特徴的な症状:右写真
犬猫のノミアレルギー性皮膚炎の検査と診断
①ノミ取り櫛検査
ノミ取りくし検査で虫体や糞を検出出来た場合、ノミアレルギー性皮膚炎を強く疑います。しかし、本検査のみで本症の診断あるいは除外を行うことは出来ず、症状と合わせて診断とします。(下写真:ノミの糞)
②アレルゲン特異的IgE検査(血液検査)
アレルゲン特異的IgE検査(血液検査)でノミ唾液抗原に対して陽性反応示した場合は、過去にノミに暴露された可能性が高いと考えられます。しかし、本検査のみで本症の診断あるいは除外を行うことは出来ません。
③試験的治療
背景や臨床徴候からノミアレルギー性皮膚炎を疑う場合は、駆虫薬を用いて試験的な治療を行います。適切な駆虫薬を用いて2ヶ月間治療を実施し、症状が緩和された場合、本症が強く疑われます。明らかな臨床症状の改善が認められなければ他の掻痒性疾患を探索する。
犬猫のノミアレルギー性皮膚炎の治療
- 動物種や年齢、体重、投与経路、投与間隔、作用の発現時間、その他の特性を考慮して、駆虫薬を投与する。(経口薬は消化器症状、外用薬や経皮薬は皮膚症状が有害反応として出現する可能性がある為、注意が必要となる)
- ノミの寄生が明らかな場合は作用発現の速い薬剤を用いる。
- 環境対策(室内の掃除etc)と生活指導(散歩コースの変更etc)
- かゆみが非常に強い場合は、副腎皮質ホルモン製剤(ステロイド)の短期投与によるかゆみの管理を検討する。
(ステロイドも使用シーンを選べば良い薬です) - 二次感染が認められる場合は、外用薬の塗布や経口薬の投与が必要となる。
犬猫のノミアレルギー性皮膚炎の予後
治療への反応は良好である事が多く、1〜2ヶ月以内で良好に管理が可能となります。
犬猫のノミアレルギー性皮膚炎の予防法
- 昆虫発育阻害剤(駆虫薬)を使用する。
- 同居動物へ症例と同様の駆虫処置を行う。(下写真:同居犬2頭ともノミアレルギー性皮膚炎に)
- 家具の隙間などの暗所を中心に掃除機で毎日吸引清掃する。
- ピレスロイド系の殺虫スプレーを使用(猫では避ける)
- ノミに噛まれやすい環境を回避する(散歩コースの変更等)
獣医皮膚科医からひとこと
春の訪れを感じる季節となりました。前回の記事では、『花粉症によるアトピー性皮膚炎の悪化』について書きましたが、今回は『ノミアレルギー性皮膚炎』について書かせて頂きました。(お察しの通り、皮膚科診察の繁忙期は春〜夏となります。)
ノミが活動的な温度(20〜30℃)および湿度(70%以下)を意識して、愛犬愛猫の健康な生活を支えてあげましょう!
犬のノミアレルギーについてはこちらも合わせてお読みください
ノミによる犬のアレルギーとは?|ノミの通年予防のススメ
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