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犬のノミ刺症、ノミアレルギー性皮膚炎って?原因・症状・治療・予防法まとめ【獣医皮膚科専門医が解説】

皮膚病解説

犬猫の飼い主さんの多くは、『ノミ予防』を毎月していることと思います。

しかし、『ノミがどんな悪さをするか』をご存知ではない飼い主さんが多いのではないでしょうか。そのような状態で毎月ノミ予防していると、「これって本当に意味あるのかな…?」って思ってしまいますよね。せっかくなので、今回『ノミ』について学び、有意義な『ノミ予防ライフ』を送りましょう!

「散歩に行かないから関係ない」「家猫だから関係ない」という声が聞こえてきそうですが、そんな貴方も無関係ではありません。犬が突然背中をかじったり、後ろ足で体を引っ掻き始めたら、原因はひょっとしたらノミかもしれません!今回は『ノミの寄生』について、特に皮膚炎、についてご説明します。

 

■ ノミ刺症、ノミアレルギー性皮膚炎とは

ノミが引き起こす病気は様々ですが、皮膚以外の症状としては、ノミの感染が重度の場合には貧血を認めることがあります。また、ノミは瓜実条虫などほかの寄生虫の感染を媒介します。また、ヒトにも感染してかゆみや皮膚炎が生じることもあります。

① ノミ刺症

ノミは吸血昆虫のため、真皮の血管から吸血する際に皮膚が障害され、皮膚に炎症が生じます。ノミによる直接的な皮膚障害をノミ刺症と呼びます。

 

② ノミアレルギー性皮膚炎

ノミが吸血する際に、ノミの唾液が皮膚の中に侵入します。そのノミの唾液の成分にアレルギー反応が起こって生じるのがノミアレルギー性皮膚炎です。したがって、1匹に吸血されただけでも、ノミの唾液が皮膚内に侵入すれば広範囲に皮膚症状がでる可能性があります。

多くは5歳未満で初めて症状が認められます。中老齢になってから急に症状が出ることもありますが、ノミとの接触歴によって左右されます。また、ノミアレルギー性皮膚炎を起こしやすい体質の犬は犬アトピー性皮膚炎や食物アレルギーを起こしやすい可能性も指摘されています。

 

■ ノミ刺症、ノミアレルギー性皮膚炎の皮膚症状

ノミの活動が活発になる梅雨から秋季にかけて、症状がよく認められます。散歩など屋外によく出かける、動物病院やトリミングサロン、ドッグランなど不特定多数の動物が集まる施設をよく利用する場合は感染リスクが高いです。「〇〇に行った後から、急にかゆくなった!」などイベント後に急性の発症・経過を示す場合は要注意です。

皮膚の症状は左右対称に分布します。ノミが感染した場合、背中から腰に症状が好発します。そのほか、首、尾、お腹、顔などにも症状が出る場合があります。

背中から腰にかけて脱毛しているM・ダックスフンドさん

また、重度かつ突然のかゆみをともなうことが一般的です。初期には、赤みやブツブツが生じますが、強くかき壊してしまうため、すぐに脱毛やえぐれ、かさぶたへと発展します。

 

■ ノミ刺症、ノミアレルギー性皮膚炎の原因

犬に感染するおもなノミはネコノミです。ネコノミという名前なのに犬にも感染する、『猫のみ』じゃない厄介な寄生虫です。

このノミは草むら縁の下や庭など、暗くて湿度の高い場所に潜んでいます。そのような場所からノミが感染するほか、感染したほかの犬や猫との接触によっても感染します。温度18~27℃、湿度75~80%がノミにとって好ましい環境で、驚異的な繁殖力をみせます。したがって、国内では梅雨前後から活発に活動しますが、乾燥した冬季でも暖かい部屋の中で活動する可能性があります。さらに、部屋の中にノミが入ってしまった可能性(人が連れて帰ってきたり)もあるため、多くの動物病院では『室内犬/猫でも1年中のノミ予防』をオススメしていると思います。

駆虫薬を用いた適切なノミの予防をしていない場合は、ノミに感染するリスクが存在します。ノミとり首輪やノミ取りシャンプーでは予防は完全ではありませんので、ご注意下さい。

 

■ ノミ刺症、ノミアレルギー性皮膚炎の診断

ノミとり櫛(写真a)によってノミやその糞(写真b)を検出します。吸血したノミの糞は黒い砂状で、水に濡らすと赤黒くにじみます(写真c)。ノミの感染が少数の場合は櫛によってノミが検出されないことも少なくありません(1匹のノミが刺しただけで発症するので、その1匹を見つけるのは困難ですよね)。そのため、ノミが検出されなくても生活環境や予防状況からノミに接触する可能性が疑われた場合は試験的に駆虫薬を投与して判定することもあります。

 

■ ノミ刺症、ノミアレルギー性皮膚炎の治療

ノミの感染が疑われた場合は、なるべく早く動物病院を受診しましょう。受診の際には、生活環境と予防状況を病院側に伝えておくとスムーズな診察を受けることができます。同居の動物がいる場合には、一緒に治療する場合が多いです。

ノミによる皮膚病の治療は、基本的に駆虫薬を用います。『原因であるノミをやっつけて、症状の回復を待つ』という作戦です。2~3日のステロイドの投与によって症状が一時的に治ることがありますが、ノミを駆虫せずに投与を続けると悪化するため要注意です。

また、ノミの繁殖力・感染力は驚異的です。ノミの感染が疑われた場合は室内を徹底的に清掃しなければなりません。ノミは掃除機で除去することが可能です。特に暗い場所を好むため、棚の下などはしっかりと掃除機をかけましょう。掃除機が届かない場所には、ピレスロイド系の殺虫スプレーを使用することも検討します。

 

ノミの感染を拡大しないために、治療が終わるまではほかの動物との接触を避け、移動を制限します。また、疑われるノミの感染ルート(草むらや河川敷など)を回避するとともに、定期的に予防しましょう。

ノミや糞を除去するために、コーミング以外に入浴やシャンプーを用いる場合があります。とくに入浴やシャンプー成分に制限はありませんが、かき壊しのある場合は強い界面活性剤を配合したシャンプー剤の使用は避けましょう。また、かき壊した部分には油剤などで保湿・保護しても良いでしょう。

 

■ ノミ刺症、ノミアレルギー性皮膚炎の予後

適切な対応により1~2ヶ月で完治します。

 

■ 獣医師からひとこと

いかがでしたでしょうか?よく水遊びしたりシャンプーする犬や、皮膚につける薬は犬が嫌がると行ったケースには、内服するタイプで犬が自分から食べてくれるおいしい味の予防薬もあります。しっかり予防をして、ノミから愛犬・愛猫・そして自分自身を守ってあげてくださいね。

最近、アメリカ食品医薬品局(FDA)から犬猫のノミダニ駆虫薬について注意喚起のための発表がありました。(原文はコチラ

『ノミダニ駆虫薬のうちイソキサゾリン系の成分の薬を服用した一部の動物に筋肉の震えや、運動や歩行の障害、てんかん様発作などの神経系の症状が出たことが報告された』

というものです。ノミの予防薬は、近年新しい薬が幾つか発売されており、過去の薬と比べて副作用が少なく与えやすい製品が増えてきています。しかし、今後もこのような喚起が起こる可能性があります。そのため完全に安心しきることはせず、「おかしいな?」と思ったら動物病院にお問い合わせするようになさって下さい。

ノミ予防薬は塗るタイプと食べるタイプが2タイプが主流です

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