犬のべんちって?原因・症状・治療・予防法まとめ【獣医皮膚科専門医が解説】
“べんち”という言葉に聞き覚えはありますか?
大型犬を飼われている飼い主さんは聞いたことがあるかもしてませんね。“べんち”とは、生活環境が原因で発症する皮膚疾患で、ヒトで言うところの“たこ”の様な状態のことを指します。
治療は原因となる環境要因を遠ざけること、そして皮膚を保護することが第一です。また、積極的なスキンケアを行うことで、変化してしまった皮膚を正常な状態に戻すことも可能となります。
■ べんちとは
べんちとは、持続的な皮膚への物理的刺激が加わった結果、皮膚が分厚く・硬くなった状態を言います。大型犬と太っている犬で多く認められ、様々な年齢で発症が認められます。
■ べんちの症状
皮膚の症状は左右対称、不対称とさまざまです。たとえば、右側を下にして寝る犬は右側に症状が強く現れます。ひじやかかとなど骨ばった部位に生じやすい傾向があります。
強いかゆみを認めることはまれです。皮膚が分厚く、硬くなり、ゴワゴワした状態で厚いフケが付着することが多く、脱毛をともないます。皮膚以外の症状を認めることはまれです。
■ べんちの原因
① 環境要因
皮膚に摩擦や圧迫が加わりやすい生活環境(特に寝床:硬い床、金属製のケージ、すのこなど)が大きく関わります。床が硬い場合、クッション性のあるものを寝床に敷いてあげることをオススメします。
② 体重の要因
体重が重い犬の方が睡眠時などに皮膚への圧力がかかりやすくなります。関節への負担も大きくなるので、体重管理を意識してあげましょう!
③ 姿勢や寝相の要因
日常的にリラックスする際の姿勢や寝相によって摩擦や圧力を受けやすい部分が決まります。
■ べんちの診断
犬種や症状、生活環境から判定可能となります。
■ べんちの予防と治療
予防は原因を遠ざけること、そして、治療はスキンケアが主体となります。
① 洗浄と入浴
皮膚表面のフケを除去するためにシャンプーなどによる洗浄が有効です。皮膚が分厚くなっているので、石鹸系や高級アルコール系の界面活性剤、サリチル酸や硫黄などの角質溶解成分を配合した洗浄剤を用います。フケが落ち着くまでは週2回ほど患部のみの洗浄をおこない、症状の改善にともなって回数を減らしていきます。シャンプー前に重曹泉や硫黄泉に10分ほど入浴すると、さらにフケを緩和することができます。
② 保湿
保湿には角質軟化効果のある尿素が推奨されます。洗浄・入浴後にくわえ、毎日適応することが推奨されます。尿素製剤は10〜20%程度のクリームを用いましょう。尿素のクリームを塗布してから皮膚表面をラップで覆い、30分ほど放置すると角質軟化効果が高まります。
③ 保護
バンテージなどで物理的刺激を受けないように皮膚を保護します。また、保湿クリームのほか、ワセリンなどの油剤を用いても皮膚を保護することができます。
生活環境の改善も大切です。日常的に使用する場所、寝床、散歩コースなどにおいて病変部に摩擦や圧迫がかかりやすい素材や構造物があればそれを除去します。また、硬い寝床などにはクッション材などを導入します。
肥満は病変の悪化要因です。適正な体型・体重を維持できる食事内容に調整します。
■ べんちの予後
スキンケアや生活環境、食生活の改善等を行えば、良好に管理することができます。
■ 獣医師からひとこと
べんちという病名は聞き慣れない方が多いと思います。ですが、写真を見たら「あ、うちの子にもあるかも!」と気づかれたのではないでしょうか?スキンケアはもちろん、生活環境や食事への配慮も大切です。ぜひ、できることから取り組んでみてくださいね!
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