動物のスキンケアにとって大きな一歩となりました

▪ TOKYO SKINCARE FETIVAL for animals
久しぶりの更新となってしまいました。
この期間なにをしていたかと言うと、私たちVet Derm Tokyo主催の『TOKYO SKINCARE FETIVAL for animals』というセミナーを開催しておりました。
『動物のスキンケアを学問として確立する』ことが大きな目的であり、獣医師100名と協賛企業様14社が集まって下さり、大きな一歩となったと感慨深い気持ちです。また、日本美容皮膚科医の権威であられる川島 眞先生(東京女子医科大学名誉教授)、カリスマトリマーとして知られる高木 美樹先生(TALL TREE.代表)にも講演して頂き、見聞を深める事が出来ました。
さて、繰り返しとなりますが、下の記事で紹介している通り、動物における『スキンケア』は学問として確立されておりません。スキンケアは『美容皮膚科』に組み込まれるのですが、ヒト医療においても『皮膚科』から約90年遅れて学会が設立されました。(日本皮膚科学会 1900年設立/日本美容皮膚科学会 1987年設立)
そのため、シャンプーや保湿などのスキンケアは軽視されている傾向にあり、薬を中心とした皮膚科治療が一般的でした。しかし、少しずつではありますが、学術的な報告が増えてきているのも事実です。犬猫の平均寿命が伸びてきているため、身体にも財布にも優しい『スキンケア』を治療や予防に取り込んでいくことは、これまで以上に価値があることだと信じております。
今後、動物のスキンケアが学問として確立され、多くの獣医師/動物看護師/トリマーの方を通して、動物を皮膚病から救うことが出来たら本望です。今回は獣医師100名を対象にしましたが、今月は動物看護師/トリマー100名を対象にしたセミナーを主催致します。近い将来飼い主の方々を対象としたセミナーを企画したいと思っておりますので、楽しみにしていて下さい。
▪ セミナー内容について
折角の機会なので、実際に用いたスライドとともにセミナー内容を少しご紹介させて頂きます。
こちらは2009年の論文であり、『アトピー性皮膚炎の犬の皮膚は、正常犬の皮膚と比べて、セラミド量が少ない』ことを証明しました。ヒトの皮膚でも同じ事を言われていましたが、この論文により犬の皮膚でも同様であった事が証明されました。セラミド量が少ないと、皮膚が乾燥し易くなる、感染源(細菌など)や抗原(アレルギーの原因)が侵入しやすくなる、などのデメリットが生じやすくなります。
また、同じ年に『必須脂肪酸のスポットオン製剤(皮膚に垂らすタイプ)を用いると、犬猫の皮膚の美容に良い』という報告がされました。こちらもヒトと同様ですが、美容皮膚科製品とともに学問が発達していくのが特徴です。
更に、2010年には、犬アトピー性皮膚炎に関する国際ガイドラインに『スキンケア』が追加されました。これにより、セラミドが配合されたシャンプー(アデルミル/ビルバック社)を使用する事で、犬のアトピー性皮膚炎が改善されることが広く知られるようになりました。
そして2015年、さらなるスキンケア製品が犬アトピー性皮膚炎に関する国際ガイドラインに追加されました。こちらもセラミドが含まれているスポットオン製剤であり、犬アトピー性皮膚炎に使うことが推奨されるようになりました。
このように少しずつではありますが、スキンケアに関するエビデンス(科学的根拠)が集まってきています。私たちは皮膚科を専門に診察する獣医師チームであるので、エビデンスを発信する事を目標にこれからも活動していきたいと思います。また、まだまだエビデンスが少ない分野であるため、獣医師によって言うことがバラバラという事もあります。『エビデンスが無いから使わない』『エビデンスを作れるかもしれないから使う』どちらも正しい考えだと思います。
大切なのは『スキンケアをすることによって、皮膚の状態を良くする』という事です。『皮膚病が長年治らない』『薬の量を減らしたい』という場合は、スキンケアを得意とする獣医師に一度お話を聞いてみても良いと思います。
講演を終えたメンバー。おつかれさまでした。
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