アトピー性皮膚炎と多汗症が劇的に改善した犬の1例
■ 来院理由
今回紹介するのは1歳のポメラニアンさんです。
来院理由は『アトピー性皮膚炎の治療をしているものの、痒みや皮膚の赤み、脱毛などの症状が残っているため』との事でした。さらに、汗の分泌が多い多汗症と呼ばれる症状も認められました。毛が濡れているかのように束になっているのが分かるでしょうか?ポメラニアン特有の毛のフサフサ感がないことがお分かりになるかと思います。
もしかしたら『多汗症』が併発しているため、アトピー性皮膚炎の治療がうまくいっていないのかもしれません。
■ 多汗症ってどんな皮膚病?
犬は人のように汗をかくことは通常はありません。しかし、様々な原因で犬の汗腺であるアポクリン腺から汗の分泌量が増えてしまう事を『多汗症』と言います(詳しい説明は下の記事をご参考下さい)。
汗が多くなると皮膚の表面には菌が増えやすくなり、痒みなどの症状の悪化につながります。このポメラニアンさんにも、マラセチアという酵母菌が皮膚の表面に増えていました。
■ アトピーに併発する多汗症を解決せよ!
このポメラニアンさんは、これまでステロイド内服薬と抗菌シャンプーによるスキンケアで治療を行っていました。しかし、来院時は皮膚の状態が良くなかったので、ステロイド内服薬からシクロスポリンという内服薬に変更することにしました。
シクロスポリンによる『炎症を抑えて痒みを止める効果』と『皮膚炎から生じる過剰な皮脂や汗の分泌を抑える効果』を期待しての変更となります。
■ 運命の再診日
上の写真は、薬を変更して2ヶ月後写真となります。初診時の写真と比べて、毛の束がなくなり、毛がフワフワしているのがお分かりかと思います。
実際、多汗の症状もなくなり、痒みも落ち着き、さらに脱毛部からの発毛が認められました。そこで、内服薬の投与回数を1日1回から2日に1回に減らし、薬用シャンプーから低刺激性のシャンプーに変更してスキンケア療法を続けることにしました。アトピー性皮膚炎も多汗症も長くお付き合いする必要がある皮膚病なので、出来るだけ飼い主様とワンちゃんへの負担が少ない治療にもっていくことも皮膚科医の腕の見せどころとなります。
左:初診時 右:治療3ヶ月後
■ まとめ
犬アトピー性皮膚炎の治療薬には、多くの選択肢があります。しかし、治療薬にはそれぞれ特徴があるため、それらの特徴を良く理解して治療に用いることが大切となります。犬のアトピー性皮膚炎や多汗症は治療が難しいケースが少なくありません。もしお困りでしたら、一度かかりつけ医や皮膚科医に相談してみてはいかがでしょうか。
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