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皮膚と痒みの関係 – 愛犬愛猫をかゆみから守るために知っておきたい事 -【獣医皮膚科医のコラム】

犬猫 皮膚 かゆみ
コラム

■ 皮膚について考えてみよう

シャワーから熱湯が出て「熱い!」と感じたり、指に針が刺さって「痛い!」と感じた経験がある方は多いのではないでしょうか?当たり前の事のように感じると思いますが、皮膚がこのように感じる事が出来るのは何故でしょうか?

熱湯 やけど

 

■ 皮膚のすぐれた能力とは?

日常の生活で感じる様々な“感覚”は、様々な臓器から発生した刺激が、神経を経由して脳が受け取る事で感じるころが出来ます。皮膚は他の臓器と異なり、外の環境にさらされているため、刺激を受けやすい環境にあることが想像出来ると思います。(こする、押される、切り傷、擦りむく、熱、冷気、乾燥など)

その為、皮膚には数多くのの神経が通っています。皮膚が感じる主な感覚は5つあります。

  1. 温度
  2. 痛み
  3. かゆみ
  4. 圧力
  5. 触れている感覚

それぞれの感覚によって異なる神経を皮膚はもっています。例えば、熱い、冷たいといった温度の感覚の場合を考えてみましょう。私たちは極端に熱いものに触れた時、とっさに手を引っ込めますよね?熱すぎる又は冷たすぎる刺激は、一番速く伝わる神経が運び、さらに脳への中継地点である脊髄を利用して、反射的に手を引っ込めるというが起こります。(脊髄反射)。包丁で指を切った時の鋭い痛みも同様に、手を引っ込める脊髄反射を起こします。「あー、痛いなあ。よし!手を引っ込めよう!」なんて考えた事はありませんよね?

脊髄反射 仕組み

 

■ かゆみは悪者?それとも味方?

一方、『かゆみ』はどうでしょうか?実は、『かゆみ』を感じる神経は独特であり、皮膚にしか存在しません。(「あー、いま肝臓がかゆい」など、他の臓器でかゆみを感じることはありませんよね?)

『かゆみ』には嫌なイメージがあるかもしれませんが、実はとても大切な感覚なんです。例えば、皮膚の表面にノミやダニが付いたとき、かゆみを感じて振り払ったりします。これは体を守るための反応ですね。

 

■ 皮膚病のかゆみは悪者にしか思えません

なんて思うくらい、かゆい時ってありますよね。或いは、愛犬愛猫が皮膚を痒がっていたら可哀想になってしまいますよね。特に、『掻けば掻くほど痒くなる』という事を経験した事がある方は多いのではないでしょうか?この現象を説明する説は色々とあります。

神経の観点から説明すると、かゆみを感じる神経は掻くことで伸びたり増えたりする可能性があると指摘されています。つまり、『皮膚を掻くと一瞬スッキリするものの、痒みを感じる神経は成長しており、かゆみのレベルがパワーアップしている』という、とても怖い話です。

ところで、かゆくて搔きすぎると今度は痛くなってきて、痒みを感じなくなったことはないでしょうか?これは痛みを伝える神経とかゆみを伝える神経が、一部同じ経路を通っているために、痛みが生じると痒みが抑制されるということによるものなんです。

 

■ 愛犬愛猫のかゆみを考える

今日の記事を読んで「かゆくても掻いちゃいけません!」と言われた事や、言った事を思い出した方も多いのではないでしょうか?頭では理解出来ていても、身体が勝手に掻いてる事も多いのが現状ですよね。

ここで犬猫の事を考えてみましょう。犬猫にかゆみを引き起こす皮膚病はたくさんあります。アレルギー、細菌感染、真菌感染、寄生虫感染、自己免疫疾患、腫瘍、、、など病名を挙げればキリがない程です。今日の復習になりますが、『かゆみは皮膚が出すSOSのサイン』です。

愛犬愛猫が皮膚や耳を掻いているときに、「アンタ何掻いてるの!?」なんて言っていませんか?犬や猫は、掻いちゃいけない事を頭で理解出来ません。今一瞬のかゆみから解放しようと一生懸命かゆみと戦ってます。それも、毎日毎日パワーアップしていく強敵です。痒みの原因がアトピー性皮膚炎の場合、ストレスがかゆみを増幅させるという話があります。もしかしたら、『皮膚を掻いて怒られて、ストレスでもっと痒くなって掻いて…』なんて事があるかもしれません。

繰り返しになりますが、『かゆみは皮膚が出すSOSのサイン』です。助けてあげられるのは、飼主さん始めとする、私たち人間しかいません。かゆみは放っておくと『強いかゆみ』に進化します。強いかゆみは、治すのに時間もお金も体力もかかります。「痒がってるな」と思ったら、是非お早めに動物病院や獣医皮膚科医にご相談下さい。私たち獣医皮膚科医も、たくさん検査したくありませんし、たくさんお薬を処方したくありません。1人でも多くの方にこの話を知って頂き、動物たちがかゆみから解放され、あどけない可愛い笑顔でお昼寝出来る事を願っております。

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